指宿にあるメガネと補聴器のハッピーワンの高田です。
介護施設や病院で働いていた頃、補聴器の悩みは多く聞きました。
当時は補聴器に関する知識もなく値段が高いくらしか知らなかったのですが、
講習や勉強を重ねた今ならわかることが多くあります。
現場で実際に使う人達の後悔の声を聴いていたからわかる悩みの解決方法
後悔しないための知識を紹介しますね。
目次
補聴器だけで完璧に聞こえるようにはならない
「補聴器は高額だし、ちゃんと聞こえないと困る」と言う方もいます。
その気持ちは、本当によくわかります。
多くの方が補聴器をつければ、若い頃のように全ての音が聞こえると
思っています。
若い頃のように聞こえない理由を説明していきますね。
①耳で音を拾って、脳で意味を理解する
音を聞くのは、耳ですが
音を処理して理解するのは脳。
長い事聞こえていないと、音を処理するところが寝たきり状態になって
すぐに動くのは難しかったりします。
骨折して一か月寝たきりになると、歩けるようになるまで少し時間がかかります。
ゆっくり体重をかける練習をして、平行棒内で身体を支えながら少しずつ歩けるようになるんです。
耳と脳も一緒
少しずつ音に慣れて、脳で意味を理解するやり方を思い出さないといけません。
耳と脳の活動が低下してる期間が長ければ長いほど、なかなか思い出せません。
だから、早く作った方がいいよっていうのも理由です。
あと、
耳の中には、3つの骨で音を伝えやすくする役割があるのですが、
年齢を重ねると体って硬くなるので
もしかしたら、音が伝わりにくくなっているかもしれません。
耳の穴も骨密度の低下や皮膚のたるみで、穴の形が変わったり
皮膚が張らないので音が吸収されたりします。
高音域だけが聞き取りにくくなるイメージですが、
実際は、色々な問題が重なって聞こえにくくなってます。
なので、補聴器で音量を上げても「聞こえない音・聞き取りにくい音」が発生している可能性があります。
②3mの範囲が聞き分けの境目
ニュースなどで、街中の映像が流れたりにぎやかな場所の動画を見る時
周囲の音ってどうなってますか?
全部の音が重なって
「ガヤガヤ」
「ワーワー」
「ざわざわ」というように
まとまって聞こえると思います。
でも、自分が街中に行くと隣で話してる人の声や
遠くで流れて音楽って聞き分けられますよね。
これが、「自分の耳」と「マイク(音を集める)→変換→スピーカー(音を出す)」の違いです。
補聴器もマイクで音を集めて、スピーカーで耳の中に音を大きくして入れます。
なので、遠くの音は重なり合ってまとまり
聞き取りにくくなります。
介護施設や病院など広いところでは、遠くの音も近くの音もまとめて入るので
聞き取りにくくなるんですね。
補聴器は、3m以内の特に会話の音をうまく取り出し、余計な音をカットして
それを時間差なくスピーカーから出します。
本当、すごい開発努力と熱心に研究した結果です。まだまだ進化し続けてます。
③音の距離感、立体感がつかみにくい
マイクで音を拾って、スピーカーで音を出す。
この作業が入るので、音の方向ってわからなくなりやすいです。
最近の補聴器は、マイクが2方向や3方向についてて方向はつかみやすいのが発売されてます。
距離感は、音の圧縮によりわかりにくいので、まだ再現するのは難しいです。
うちでは、この図をおいてご家族の方に聞こえ方の説明をしています。
聞こえ方に違和感の少ない人
聞きたい音、必要な音に自動でピントを合わせられる。
音の立体感、距離感がわかるので
どのあたりで音が鳴ったなどがわかる。
補聴器型集音器
近くの音も遠くの音も大きくするだけなので、
音が重なって聞こえ聞きたい音が聞こえにくくなる。
通販などで2万円以下で買えるものが多く、息子さんからのプレゼントが多い。
補聴器
補聴器は、その人の聴力に合わせて調整します。
近くの会話を聞き取りやすくするために遠くの雑音を抑制してくれるので、
話やテレビの音声が聞き取りやすくなる。
音の立体感や距離感が欲しいときは両耳装用
少しでも、音の方向や聞き取りやすさがほしいなら
片耳だけの補聴器よりも、
両耳装用の補聴器の方がわかりやすいです。
片耳では、反対側の音は入りにくいうえに全部つけてる方から音がします。
両耳装用になると、
右左がわかるだけでなく、不思議と前後までわかるようになるんです。
④補聴器に求める役割
①音を処理して理解するのは脳
②3mの範囲が聞き分けの境目
③音の立体感、距離感はつかみにくい
このように、高額な補聴器にも弱点はあるんです。
けど、この弱点を全部解決してしまうと起こる問題点もあります。
全ての音がクリアに立体的になって聞こえると
見え過ぎる眼鏡のように頭が痛くなります。
情報量が多すぎるんです。
学生時代なみに、脳の吸収力、適応力が高ければ対処できるかもしれませんが…
普通は難しいです。
なので、補聴器にもとめるのは、
①近くの人と会話がしやすいように
②危険には音がついてることが多いので、その危険に反応できるように
まとめると
「ある程度、会話ができて、危険に反応できるようにするため」
会話少しでもあれば、脳の認知機能は維持できるし
大きな音に反応できれば、転倒リスクや災害時に身を守りやすくなります。
補聴器は、若い頃の聞こえ方を取り戻す
魔法の道具ではないと覚えておいてくださいね。
購入時と使用時の注意点
介護施設や病院で買って後悔した人達の話や、理不尽だな~って思った事
当時の人たちに教えてあげたかった事をまとめます。
①値段が全て解決するわけではない
高ければ高いほど、性能が良い補聴器になる。
性能が良いということは、聞こえ方もハッキリと良くなる。
そう思っている人も多いのですが、
実は、すこし違います。
値段の高さで変わってくるのは、
変化ポイント
・音の方向性のわかりやすさ
・自分の声の響きを抑えて聞き取りやすくする
・騒音抑制
・風の音を抑制
・急になる大きな音を抑制
なので、静かな環境での聞き取りやすさというより
外出先や屋外での使いやすさ
音の方向性がわかりやすくなる
大きな音が鳴っても耳に響かない
という点です。
静かな場所でも聞き取りやすさは、最新のものになってくると
劇的な変化はあまり感じません。
使い心地の方が値段で変わってくる印象です。
②介護施設や入院中に無くしやすいのはオーダーメイド
病院や施設で補聴器無くした!って話はよく聞きます。
なので、職員さんたちはゴミ捨てに対して結構神経とがらせてます。
補聴器持ってたり、なんでもティッシュにくるむクセのある人は
ちゃんと開いて確認しないと補聴器や大切なものを捨てますからね…
たまに本人が忘れてて捨ててしまう場合もあります。
あとは、ベッドの上に置いててリクライニングで起こしたときに
コロコロと転がっていってしまうバターンですね。
シーツの隙間に入ったりしたら、本当わからなくなります。
ティッシュに包みやすい形で…
ころころ転がりやすいのは…
オーダーメイドです。
落下防止のためだけでなく
紛失予防のためにも「落下防止ストラップ」はあった方が安心です。
③耳も痩せる(歯茎と一緒)
入院中や介護施設にいると、
自宅にいる時より運動量が減って
骨密度が下がりがちです。
あと、バランスの良い食事になるので痩せる人もいます。
ここで1つ問題が…
耳掛け式の補聴器は、体型に影響されませんが
オーダーメイドは、作ったときの耳穴に合わせているので
その後、痩せたりするとスルっと落ちやすくなったりします。
なので、施設にいたり入院する予定のある人はオーダーメイドにするか
もう1度考えた方がいいかもしれません。
ただ、治療で髪の毛が抜けてしまったり
寒くて帽子をかぶる方には、耳掛け式は帽子でマイクを塞いだり
がさがさと擦れる音があるのでオーダーメイドの方が使いやすくなります。
④どのくらい汗をかくかで選ぶ種類が変わる
指宿市は、農作業や家庭菜園をする方が多いです。
畑をしてる時は補聴器絶対つけないという人なら大丈夫ですが、
連携をとりながら収穫したり、
杭を立てたり、
ビニールハウスを建てる。
どうしても必要な場合ってあると思います。
耳掛けタイプ(RIC含む)は、完ぺきではないのですが防水加工がしてあるものがあります。
ただ、耳穴式のオーダーメイドは、それが難しいんです。
なので耳垢が湿っている人や
外仕事で汗をかきやすい人は、耳掛け式の方が汗によるダメージが少ないです。
ただ、防水加工は真水につけて実験するので
汗など塩分や小さい物質が入る状況では
防水の効果が変わってくるので注意が必要です。
なので温泉も要注意です。
⑤近場+調整や掃除ができる店で買う
補聴器は買って終わりの物ではありません。
使う環境や、使い方、脳の慣れ具合に応じて
調整をしていくことで、使いやすい補聴器になります。
そして、店でいつでも調整や掃除ができるか?という点も大切です。
週に1回だけメーカーさんが来ます
という状態では、タイミングが合わせにくく
我慢して使うか、使わなくなる人もいます。
なので、車で1時間かけて買いに行っても
他店では調整ができないので、地元のお店で買った方が安心です。
⑥家と病院では聞こえ方が違う
家の中は、壁もあり病院のロビーのように広くないので
音は聞き取りやすくなります。
なので、購入時店の中でハッキリ聞こえても
デイや病院、公民館では聞き取りにくいということがあります。
聞き取りやすくするために微調整しながら
ちょうど良いくらいの音を探っていきます。
家の中は、3m以内の音で収まるからいいのですが
病院や公民館は3m以上離れたところの音や
四方八方から音が飛んでくるので、
音が重なり使いにくくなります。
⑦購入してからが、お付き合いスタート
売る立場になってわかったのですが、
補聴器って原価がものすごく高いので値引きがしにくいんです。
なので、チェーン店や大手じゃない個人店でも
値段が変わらないんです。
補聴器型集音器と補聴器は、全然別物なのではぶきますが
値段が変わらないなら、ちゃんとしてくれる店がいいですよね。
病院や施設でよく聞いたのが、
「補聴器が使いにくい!」と言いに行ったら
「担当者が移動になりました」って新しいのを勧められたから怒って帰ってきたって…
ちょっとひどいなって思います
チェーン店は、ノルマがあるから、高いのを売らなければ!という気持ちがあって
しょうがないかもしれないけど、良い気持ちはしません。
だけど、がめつい個人店もあるから難しいところです…
むむむ
難しいですね。
もう、店員さんの人となりを補聴器以外の相談とかして
ある程度わかってから高額なもの買った方が安全だと思います。
補聴器は、購入してから本当の付き合いが始まります。
この人なら大丈夫って店員さんのいる場所で購入してくださいね。
当店の補聴器への思い
うちは、補聴器をたくさん売りたいと考えていません。
眼鏡を作ったり、調整しにきていただいたりして
私自身に任せてもいいかなって思ってもらえたら相談してください。
補聴器の検査をして、あんまり必要性を感じなければ
まだいらないですよとお伝えすることがあります。
聞き方のトレーニングだったり、首とあごの筋トレで聞きやすさが変わることがあるからです。
病院や介護施設で、補聴器の重要性は十分に理解しています。
耳からの音を入れるのが目的ではなく、
会話をすることで、人との繋がりを大切にする。
あなたらしい生活を送るために補聴器は必要です。
あと、本人様もですが、ご家族への説明をすることで
周囲の人の理解が深まることが多いです。
本人に勧める前に、ご家族の方からの相談も多いので
その際には難聴の聞こえ方をイラストなどで説明しますね。
言葉ではわかりにくいけど、視覚で感じるとわかりやすかったりします。
少しでもお役に立てると嬉しいです。